自家培養発酵種の美味しさの理由
酵母と共生する乳酸菌の存在
自家培養発酵種の美味しさの理由の一つに「乳酸菌」の働きがあります。
一般的に多くのベーカリーで使用されている市販のパン酵母(生イースト等)は、
パンの発酵に適した単一の酵母を抽出・純粋培養した、効率よく大量生産できる作業性重視の便利なものです。
一方、自家培養発酵種には、酵母のほかに多数の乳酸菌が共生しており、
穀物や果実などに付着している微生物(酵母や細菌)がエネルギーを得るために、
有機物を分解し、アルコール類、有機酸類、二酸化炭素など生成したものを利用するため、
単一の酵母(市販イースト)と比べ、複雑な香りや味わいを引き出してくれます。
発酵種としての乳酸菌
乳酸菌が発酵する過程で生成する乳酸や酢酸などの有機酸は、風味形成に大きな影響を与えます。
乳酸菌はそのほかの有機酸も生成するため、それらが混ざり合い複雑な香りや味わいを楽しませてくれます。
さらに、乳酸はタンパク質と混ざることで生地を柔らかくする効果もあるため、
もちっとした食感を引き出します。
また、乳酸や酢酸には微生物の増殖を抑える効果もあり、カビや雑菌の増殖を抑制します。
単一のパン酵母では出せない、複雑ながらも素朴な味わいを引き出してくれるのは、
様々な働きをしてくれる乳酸菌のおかげです。
きっと、噛めば噛むほどにその美味しさをお楽しみいただけると思います。
※参考著書
『発酵種(サワードゥ)とパン』 「発酵種とパン」編集委員会