2026/06/29 20:00







「好きなパンランキング」でも堂々の1位の座を獲得し続け

まさに王者の風格すら醸し出すクロワッサン!




あれ?そういえば真っ先にオススメしそうなのに、

クロワッサンはオススメしてこないのかな…?



って思っていた方も、

もしかしたらいらっしゃったかもしれません。




いや、クロワッサンって難しいですよね。




何が難しいって…お店によって本当に違うんですよ。



バターの種類が違えば風味に違いが出るし、

バターと、マーガリンやショートニングなどとの混合なら食感もまた違ってくるし、

折り方や巻き方とか長さとかまで言い出したら

本当にそのお店の職人のこだわりしか詰まっていない。



うーん…何から話していけばいいのか…


と、ちょっとまだ迷子になっているので、

こういう時はとりあえず書き始めたらなんとかなるんです(笑)


ということで、まずはクロワッサンの歴史から始めていきましょう!




■『オーストリアの勝利の記念パンが、

フランスでサクサクの芸術へと進化した』




□ 誕生のルーツはオーストリアの「キプフェル」(17世紀)

1683年、オーストリアの首都ウィーンがオスマン帝国(トルコ)軍に包囲される事件が発生。

夜中にトンネルを掘る敵の音に気づいたパン職人が軍へ通報し、街を救いました。

(なんでパン職人が?っていうのは、

パン職人は真夜中から働いてますからね)


ウィーンの防衛成功を記念し、パン職人たちがトルコ国旗のシンボルである

「三日月」をかたどったパン「キプフェル」を焼いたことが起源とされています。


※補足(諸説あり)

この戦勝記念説のほかにも、それ以前から修道院などで作られていたという説も存在します。



□  フランスへの伝来(18〜19世紀)

18世紀、オーストリアからフランス王室へ嫁いだマリー・アントワネットが

故郷のキプフェルを持ち込んだというエピソードが広く知られています。


(ちなみに『パンがなければお菓子を食べればいいじゃない?』のあのセリフ、

実はマリー本人は言ってなかった説が濃厚なんですよね…)



そして1838年、オーストリア人の起業家アウグスト・ツァングがパリに開いた高級ペストリー店が、

現在のサクサクとしたパイ生地に近いキプフェルを販売しました。

これが三日月形であったことから、フランス語で三日月を意味する「クロワッサン」と呼ばれるようになりました。



■  じゃあ、三日月型が『クロワッサン』なの?



クロワッサンと言うと菱形(まっすぐな形)と三日月型、

どちらもお見かけしたことがあることでしょう。


当店のクロワッサンは菱形(まっすぐな形)に焼き上げています。


「菱形も三日月型もどっちもクロワッサンなの?

何が違うの?」


と、ちょっと混乱してしまいそうなので

これも整理していきましょう。



■  フランスでは油脂の違いで厳密に区別されている



□ 菱形(まっすぐな形)

使われている油脂は、100%バターです。

フランスでの呼び名は「クロワッサン・オ・ブール(Croissant au beurre = バターのクロワッサン)」


特徴は、贅沢なバターの香りと豊かなコク、サクサクとした上質な食感が楽しめます。

両端を曲げずにまっすぐ成形するため、焼き上がりがきれいな「菱形(ひしがた)」になります。


□  三日月型(両端を丸く曲げた形)

使われている油脂は、マーガリン または 植物性油脂です。

フランスでの呼び名は「クロワッサン・オルディネール(Croissant ordinaire = 普通のクロワッサン)」


特徴は、バター製よりも価格が安く、あっさりとした軽い食感。

元々の歴史的なルーツである「三日月(キプフェル)」の形をそのまま受け継いでいます。




■  なぜ形を分けるのか?



19〜20世紀、安価なマーガリンが普及した際に、

消費者が一目で区別できることで、

「高級なバターを使ったクロワッサンだと騙されないようにするため」にこの習慣が生まれました。



(あんまり大きな声では言えませんが…

個人的には日本もそれ取り入れたらいいのになって密かに思っています(笑)

だって、そうなっていればお客様側からもわかりやすいはずですし。)



そう、これはフランスの伝統的なルールであり、現代の日本においては特に決まりはありません。


日本のパン屋では、バター100%のクロワッサンであっても、

見た目の可愛らしさからあえて「三日月型」に曲げて作られていることもありますし、

逆にマーガリンや植物性油脂で作られていても「菱形」のものもあります。


だから、バター100%の濃厚なクロワッサンが食べたい!と菱形を選ぶと違ったり、

逆に、軽めの食感の気楽に食べられるクロワッサンがほしい!と三日月型を選ぶと違う可能性もあります。


なので、POPなどでじっくり確認することは必須なんですよ(笑)




■  うちはもちろんバター100%!!



と言っても、開業当初よりそうだった訳ではありません。


独立した場所から、現在のところへ移転するにあたり

どうせならもっと良い品質、贅沢なものが作りたいと、

バター100%に切り替えたのがきっかけです。



ただし、バターに切り替えたらオッケー☆ってことでもなかったんですよ。



■  混合からバター100%へ切り替えてみたら…

(※10年前当時の話)



油脂を混合して作られているクロワッサンの多くは、

土台となる生地はバターだけど、折り込みに使う油脂シートはマーガリンシート

みたいなパターンが多いと思います。


使っていた10年前はマーガリンシートが主流でしたけど、

今の時代だと当時よりもバター風味が増したシートもあるとか。

(ここらへんは使用していないので耳にする情報だけとなりますが)


マーガリンって、だいたいが香料が含まれているんですね。


そのマーガリンシートを使っていたところに

香料が含まれていないバターのみに変えると…


なんか香りが弱い気がする。


せっかくバターを100%使っているのに、おかしいな…?と。


ただし、味はやっぱりバターの濃厚な味わいがしっかり感じられて美味しい。


でも、「バター100%になりました!」って言っても、

以前のものより香りが弱いとなんだか説得力に欠けるというか。


そして、何度か試作をしていくうちに食感も気になってきて、

なんていうか…軽くてバターの風味や生地の甘みがより感じられるようになって、

パンというよりお菓子みたいだな…と。



これはこれで美味しい。

でも、食事として食べるにはちょっと物足りない。

もっと外側をザクッとさせて、しっかり噛みたい。



…卵を入れないレシピにしたらどうだろうか?



と作ってみると、卵の繋ぎがなくなった分、生地がギスギスした感じに。

ザクッとしたけど、油脂が馴染んでない…というか足りない?


なら…と、さらにバターの割合を増やしてみる。


今度はバターを増やしたことで、香りは十分感じられるようになったものの

生地がバターを抱え込みきれていないからか焼きあがると鉄板に流れ出ているものも。



うーん…生地が硬すぎるのか…。


なら…と、今度は持ってる範囲の小麦粉を掛け合わせ、

配合調整を繰り返して良いところを探っていく。



卵を抜いて、

バターの配合量は増やして、

小麦粉のバランスで調整する。



ザクッとしてるけど、バターの香りもしっかりしていて

自分が思っていたクロワッサンにやっと近づいた。



その当時はそれがベストだとも思っていた。

ぼんやりと残るモヤが何か見えずにいたけど、それは何かわからないままで。



■  今のクロワッサンへと押し上げたのは、やっぱり…レーズン発酵種



その後に、自家培養発酵種に切り替えるにあたり、

初めはハード系をと考えていたのが、

クロワッサンも切り替えてみようとやってみたのが幸を成しました。



本当に、努力と試行錯誤の上でやっと完成した!!みたいなものではなく、

がっかりさせてしまうかもしれませんが偶然の巡り合わせといいますか(笑)



もちろん、初めこそ生地に含んでいるバターの配合量が多いので重く、

なおかつ発酵種ゆえの生地の扱いの難しさの難易度はあがりました。

パン屋にとってなかなか致命的なのが、生地の保存がきかないこと。



一般的なイーストなら、ある程度作り置きして生地を冷凍保存したりできるんですね。


発酵種はそれができない。


一度冷凍する、もしくは冷凍までいかなくても数日冷蔵庫にて待機させていても、

その後はなかなか起きてくれない。思うように発酵してくれない。


非常にデリケートな扱いとなり、毎日の業務負担は増えていく一方なのですが、


それでも今のその方法を選んでいるのは、

自分が何かわからず抱えていたあと一つのパズルのピースをはめて、

これだ!ってなるクロワッサンに押し上げてくれたのが発酵種だったから。



それまでずっとネックだったのが、

クロワッサンを焼きあげたときにバターが流れ出ていること。


せっかくバターをたっぷり使っているのに流れでているのがもったいない。

だからと言ってバターを減らすと風味が物足りない。

どうすれば流れ出ない生地にできるのか…?


のモヤモヤを解決をしてくれたのが発酵種でした。



たっぷりのバターを生地に抱え込ませたままにできるのは

発酵種の中にいる乳酸菌が生地を柔らかくしてくれるから。


外側はザクッとさせながらも、

中はしっとりもっちりしているのは

今まで流れ出ていたバターをしっかり抱き込んでいてくれるから。



「…これだ!このクロワッサンがずっと作りたかったんだ!」




多分、自家培養発酵種に辿り着いていなかったら、

今でもバターが流れ出たままのクロワッサンを焼き続けていたことでしょう。


そう思うとやっぱり、今の自分のパンづくりにおいて、

自家培養発酵種の存在は必要不可欠であり、

このコたちのおかげでさらにパンづくりの面白さを楽しめているのは、

パン職人として本当に幸せなことだなと思います。



■  クロワッサンづくりのこだわりは?



こだわりは語り出すとまた長くなるので…うーん、どうしようかな(笑)


多分、大事な工程として

折込油脂を入れる段階が仕上がりを左右するんじゃないかなと思います。


クロワッサン生地を作るときって冷やしながら、

バターの層をいかに潰さないかに気を配るんですね。


マーガリンシートを折り込むならそれほどではないのかもしれませんが、

うちみたいな小さな個人店はバターシートがまず手に入らない(笑)


なので、固形のバターを手作業で叩いて伸ばしたやつを折り込んでます。


叩いて伸ばした手製シートも、緩いままでは生地に溶け込んでしまうから一度冷やして、

折り込む前の生地も、練り上げてすぐはミキシングの摩擦で少し温かかったりするので、

これも一度冷ますために冷やして待機。


ここで、冷えたな~、じゃあ折り込もうとするのではなく、


ポイントは手製バターシートをもう一度伸ばす。

お店で言うなら、パキパキのシートをシーターを通して均すって感じです。

もし、お家でされるなら、麺棒か何かで引っかかりがないくらい

ゴロゴロとシートの上を転がしてから折り込んでいくと良いと思います。


これをしないと、硬すぎるバターだと折り込んでも伸びが悪く、

パキパキ割れたりして生地と一緒に全体に伸びずに焼きあがりの層にムラができやすくなったり。


逆に生地もバターシートも緩いと(柔らかいと)、生地の中にバターが溶け込んでしまって

層ができずに中が潰れたクロワッサンになりやすい。


みたいな感じです。結構、ちゃんと集中してやっています(笑)



もし、途中でちょっと緩いかも?ってなれば、

一旦止めて少しだけ冷やしてみるのもありかもしれません。




□  クロワッサンと言えば…




あの、よく見かけるじゃないですか。

フランス人はクロワッサンを温かいカフェオレに浸して食べるっていう、

まるで映画のワンシーンのようなオシャレなやつ。



あれ観てると、そんなに美味しいのか…?と好奇心が疼いたので、やってみたんですよ。



大きめのカップにたっぷりのカフェオレを用意して…

クロワッサンを浸してみる。


ちょっと自分がフランス人になったかのような、

あのオシャレな感じをイメージしてドキドキしながら口に運ぶ…。



…?


いや、合わないぞ??


それぞれはちゃんと美味しいはずなのに、

合わせるとバターの油分とカフェオレの乳成分とが口に重い…。


いや、でもフランスではそれが文化だから、

あれか?うちのクロワッサンがフランスに合わないのか…?

バターが重すぎるのか…。


それなら、本場フランスのクロワッサンはどんな感じなんだ…?



これは死ぬまでに一度フランスに行って確認してみたいところだな…。



って考えながら、

新たに用意したブラックコーヒーで流し込む。



うん、ブラックコーヒーのがうちのクロワッサンには合うな。


オシャレなフランスはまだ早かったみたいです(笑)