2026/05/13 15:34

■ イースト(パン酵母)と天然酵母と自家培養酵母
「天然酵母のほうがやっぱり良いんですか?」
「天然酵母とイーストは何が違うんですか?」
と、よく聞かれることが多いこの質問。
おそらく、なんとなく難しくしているのは
「天然酵母」という表記にあるのだと思います。
「天然酵母」という言葉は曖昧で、
実際には「天然酵母のみが自然の酵母」という意味ではありません。
そもそもパンづくりに使われる酵母は、
イーストも天然酵母も自家培養酵母も、すべて自然界に生息する酵母を採取・培養したものです。
そのため「天然酵母」という表記だけを特別視したり、
「自然の酵母」と区別するように扱うこと自体が誤解の元になっているのではないかと考えます。
(※区別したい気持ちは、とてもよくわかります。笑)
もう少し詳しく述べるなら、
①イースト(パン酵母)
専門の業者がパン発酵に適した単一の酵母を純粋培養したもの
②天然酵母(ここが一番曖昧に表記使用されることが多いので一つの見解例として)
専門の業者が培養した発酵種製品※を主に使用しているところが、天然酵母と表記している例が多いです。
例:ホシノ天然酵母、あこ天然酵母、白神こだま酵母など
※もちろん自家製の酵母を使用されているお店も天然酵母と表記されていたりもします。
③自家培養酵母(発酵種)
種起こしから種継まですべての工程を独自で行い、酵母だけでなく乳酸菌などの微生物が一緒に働くことで、
単一の酵母では出せない複雑な旨味が生まれます。
※イーストなどとの併用もなく、発酵種のみ使用しているところは、
他店との違いを表すためにこのような表記にされてるところが多いと思います(当店がそうです)
■ じゃあ、結局天然酵母って何?
きっとそんな感想がでてきた事でしょう。
そもそも、どの酵母も
「穀物や果実等、自然界に生息している酵母」を採取・培養されたものです。
自然界に生息している酵母に対して、
「天然」と区別するかのように表記される事が、
多くの誤解を招いているのではないでしょうか?
①イースト
発酵力に特化した単一の酵母菌を採取・培養し、
誰にでも扱いやすく、早いサイクルでの大量生産を可能にしたことで、
現代の食生活の安定をもたらしてくれているもの。
②天然酵母
各メーカーさんが採取・培養し、
それぞれの商品にはフルーティーな香りや、イースト臭が感じられないなどの違いを楽しめる。
扱いに少しコツが必要ではあるけれど、イーストとはまた違う美味しさのパンづくりを可能にしたもの。
③自家培養酵母(発酵種)
酵母菌のみでなく乳酸菌など他の微生物と共生することで生まれる、風味や食感への効果を追求したパンづくりを可能にしたもの。
扱いはかなり難しいけれど、単一菌では出せない複雑な味わいを楽しむことができる。
店主も元々の修行時代は、イーストから始まっています。
そこでパンづくりの楽しさを知り、自分の店を持ってからも、試行錯誤していく過程でホシノ天然酵母や白神こだま酵母も使いました。
それまでとはまた違うパンの美味しさが表現出来たことがさらに夢中にさせ、今では複雑な自家培養酵母の世界にまで足を踏み入れてしまいました。
自家培養酵母は想像以上に管理が難しく、
正直、酵母に振り回されることも多い毎日です。
それでも、酵母たちが出してくる「単一の菌では絶対に出せない複雑な旨味」には勝てず、屈してしまったのです(笑)
それぞれの酵母には、それぞれの役割と良さがあります。
どれが優れているかという単純な優劣の話ではなく、当店ではこの「手はかかるけれど奥の深い風味」に魅了されて、この道を選んでいます。
それぞれの違いを楽しんでいただくと、
パンの世界が少し広く、少し面白く感じてもらえるかもしれません。
※参考
社団法人 日本パン技術研究所
